徒然ゆるらかレポート

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憲法改正手続きの厳格さ

こんにちは。ふさねこです。



5月3日は憲法記念日でしたね。

安倍首相は、緊急事態の中で憲法改正による緊急事態条項の創設の議論を進める必要性を主張しましたが、立憲民主党の枝野代表は改正の必要はないとの見解を示しました。憲法改正をすることなくこの緊急事態に対応できるかが争点となっているようです。


確かに、日本国憲法には国家緊急権についての規定はありません。衆議院憲法調査会事務局の『「非常事態と憲法」に関する基礎資料 安全保障及び国際協力に関する調査小委員会(平成15年2月6日及び3月6日の参考資料)』によると、国家緊急権とは、「戦争・内乱・恐慌・大規模な自然災害など、平時の統治機構をもっては対処できない非常事態において、国家の存立を維持するために、国家権力が、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置をとる権限」とされています。国家緊急権は、国家権力の権限であるとわかります。


内閣の首長たる首相は、自らの権限を憲法の中で規定する必要があると自ら主張していることになります。





しかし、日本国憲法の改正は簡単にはできません。
日本国憲法は、憲法の改正に通常の法律の制定よりも厳格な手続きを要する硬性憲法であるためです。厳格な手続きが必要なのは、憲法が個人の自由たる人権を保障するために国家権力を制限する法であるからであり、人権保障のための法を簡単に改正できないのは、人権が最高の価値を持ち侵害してはならないからです。

つまり、人権の価値の高さゆえに憲法の中で人権を基礎付け保障し、人権侵害を歴史的にしてきた国家権力を制限しており、この構造を簡単には変えさせないこととしています。



憲法96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。




ここでは、憲法改正の手続きを定めています。

まずは、国会による発議が必要です。
衆議院では議員100人以上、参議院では議員50人以上の賛成で議院への発案をすることができ、その後、各議院でその総議員の2/3以上の賛成をもって国民に提出される憲法改正案を国会は決定することができます。そうして決定された改正案は「日本国民で年齢満18年以上の者」による国民投票においてその有効投票総数の過半数の賛成をもって改正されます。最後に、天皇が国民の名で公布します。


国民の代表で構成される国会が厳しい手続きを経て改正案を決定し、主権者たる国民が当該改正案を承認した場合には改正される流れです。




内閣が憲法改正の議院への発案をすることができるかについては諸説あるようですが、否定説が有力です。日本国憲法は人権保障のために国家権力を制限するべく国民によって制定された憲法です。そのため、改正においても民主的コントロールを及ぼすべきだと思われます。


この見解に立つと、内閣が憲法改正の議院への発案をすることは違憲ということになります。



今回の改正をめぐる議論については、国家権力の制限を一時的停止する規定を国家権力自らがその必要性を主張し、憲法改正の議論を促すものですから、主権者たる国民は慎重に考えなければならないでしょう。



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